西洋陶磁器骨董専門店アンティークアーカイヴ

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品番 No. KP-1

作品名 

KPMベルリン プレート 「輪投げ遊びの女性」
エナメル彩(ビジュー)の装飾 
制作年
1905年頃
価格
申し訳ございませんが、売り切れました。
お買い上げ、誠に有難うございました。
コンディション

修復・ダメージなし
アンティークとしてよいコンディション
サイズ
直径 約26cm



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アンティーク アーカイヴ
TEL 03-5717-3108











解説
何年かに一度あるかないかですが、その作品に出会った時、呆然と立ちつくしたまま動けなくなってしまう事があります。本や資料でしか見たことの無いような逸品に出会った時には、感動のあまり声を上げてしまう事がありますが、本作に出合った時には声さえもでませんでした。本作の類例は本や美術館でも見たことが無く、驚きや感激よりも戸惑いが先でした。当初は一瞥しただけで、次の品物に視線を移していました。しかし、どこか頭に引っ掛かっていたのでしょう。もう一度視線を戻して作品を見直しました。そして、「これがKPM・・・・?」と戸惑いつつも、それでも本作の美しさにしばし立ち尽くして動けなくなってしまいました。

マークは、釉下に青の杓杖、釉上に赤の宝珠の二つがあり、KPMの真性品に間違いありません。また、縁取りの装飾も、「盛り金=レイズド・ゴールド」と「透明エナメルのビジュー」であり、KPMの最上級の作品に見られるものです。エナメル彩は濃いピンクと薄いピンク、黄色で花が描かれ、緑で周囲の縁が装飾されています。こうした手間とお金がかかる贅沢な装飾はこの時代のKPMの特徴であり、資料や美術館にも多くの例があります。ここまではKPM間違いなしです。問題は絵付けです。

意識的にディテールを描き込まず、柔らかいタッチと光を強く意識したその描法は、まるで印象派の絵画をみるようです。こうした描法の絵付けは、ともすれば、雑で稚拙な絵付けと紙一重です。印象派の絵画が伝統を重んじる評論家にひどくけなされたたように、細密で鮮やかな絵付けを身上とする磁器絵付けからみれば、本作は手抜きの絵付けのように見えるかもしれません。しかし、よく見れば、本作の絵付けは非常に高度な技術に基づいています。例えば女性の顔を見て下さい。目鼻は思い切り省略してありますが、とても活き活きした表情にみえます。(ピンクの服の女性が輪を棒で飛ばし、青い服の女性はそれを受けようと待っています。紫色の服の女性は落ちた輪を拾いながら、その様子を見ています。)また、手前の白い花や森の深い影などは、画面の奥行きを表現するための重要なテクニックです。こうしてみてくると、本作の絵付けは単なる絵付け職人の仕事ではなく、高度の技術と感性を持った芸術家・画家の仕事であるように思えます。
色彩といいタッチといい、まるで、初期のモネの絵画を見ているような本作の絵付けは、一体誰の作品なのでしょうか?

この時代のKPMには印象主義様式の絵付けが見られますが、極僅かな珍しいものです。印象主義様式の描法をKPMに持ち込んだのは、花の絵付け師「P.ミーテ=Paul Miethe」です。また、T.バウディスやF.トゥールケなどKPMには有名な絵付け師が存在しますが、本作は彼らの作風とは明らかに異なります。絵画においても、ドイツでの印象主義はフランスほどに定着せず、すぐに表現主義の様式へと移行してしまいます。これは19世紀の終りの普仏戦争時において、印象主義は敵国の様式とされ、ドイツの芸術家が積極的に取り入れなかったのが原因ととされています。

店の主人に作者について尋ねると、「サインは無い」との事でしたが、仔細に観察すると画面右下に「Trzaska」と入っていました。(部分画像の上列左から3番目)
 「Erasmus Ttzaska」! 彼は1910年頃にKPMで絵付け師として働いていた人物です。KPMのユーゲント時代の代表作の一つに「Kampの置時計」という傑作があるのですが、この作品の絵付けを担当したのがTrzaskaでした。彼は人物画を得意とし、この時計にも、森で踊る5人の人物を絵付けしています。(ちなみにKampというのは造形の芸術家の名です。)これで戸惑いは完全に払拭されました。これはKPMの真作であり、今ではユーゲント時代の歴史に残る傑作だと確信しています。

コンディションはとても良い状態ものです。金彩のスレやハゲもありません。ただし、絵付けの暗い部分にすれたようなキズがあり、色を差して目立たなくしてあります。しかし、全体の印象を壊すような大きな瑕疵ではないので、それほど大きな問題とは考えていません。高価ですが、個人的には良質な印象派の絵画と同等か、それ以上の価値のあるものと思います。本作は、もはや単なる磁器作品ではなく、絵画の芸術性と工芸の価値を兼ね備えた、総合芸術品と考えています。ユーゲント時代の希少性を考慮し、またフランスのセーブルの同時期の作品と比較しても、決して高すぎる価格ではなく、むしろリーズナブルと価格と考えています


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